統計を信じすぎていませんか?
ニュースなどの報道で流れる統計や数字をそのまま信じるのは、ちょっと危ないです。
- 統計は完璧ではなく
- 統計は見せ方による
ということがわかるように、本記事ではジョエル・ベスト著『統計はこうしてウソをつく』をもとに、統計が嘘をつく例を5つ紹介します(すべて海外の事例です)。
統計が嘘をつく5つの例
1.銃によって殺された子供の数
まずは、トンデモ統計の話から。
ある大学院生の学位論文計画書に引用として書いた言葉がコチラ。
米国で銃によって殺される子供の数は、1950年以来、年ごとに倍増している
p12
これがいかに、おかしなことを言ってるのかがわかりますか?
仮に、1950年に銃で殺された子供の数は1人だったとする。とすると、1951年に2人。1952年に4人。
これが文言通り、「年ごとに倍増している」のであれば、1960年に1024人、1970年には約100万人、1980年には10億人(当時の米国の総人口の4倍以上)となる。
なぜこんなトンデモ統計が書かれてしまったのか?
正解はとても単純で、引用元にはこう書かれていたそうです。
1年間に米国で銃によって殺される子供の数は、1950年以来倍増している
(この文章自体ちょっとややこしいのですが)大学院生は1年間という言葉を抜いて、引用してしまったんですね。
つまりめっちゃ簡単に言えば「1950年の死者数は1949年の死者数の2倍だった」というだけのことです。
ゆうすけ
2.売春婦の数
19世紀の米国人は売春の拡がりに気をもんでいた。
改革論者は、「社会悪」という言葉で売春を指し、多くの女性が売春をしていると警告した。
どれだけの女性が?
p21
改革論者たちは、「売春婦の数は1万人はくだらない(ニューヨークの女性の約10%)」と言った。
また、ニューヨークのメソジスト教会の監督は、「1万人1000人~1万人2000人はいる」と主張した。
しかし
実体の数字はと言うと、警察が調査した結果は「売春婦は1223人しかいない」であった。
これは数字を見せる改革論者が、推定値を大きくみせてしまったことが原因であり、その数字が広まってしまったからです。
だって、改革論者にとって「売春婦はたくさんいる」というのが有利なイメージだからですね。
ゆうすけ
3.小児性愛者の数
「米国の5万2000人のローマカトリックの司祭のうち、6%が、成人してから未成年者に性的関心を抱いたことがある」
p99
このひとつの統計がいくつかの原因で変化することがある。
ひとつは、これが「推定値」であることを忘れて、見てしまう人がいる。
他には、この推定値が、「実際に行動に起こした人の数」ではなく「性的魅力を感じた人」であるにも関わらず、この数字を受け入りした人が、司祭の6%すべての人が、未成年者と性交渉をもったかのように、塗り替えてしまう人がいるということもある。
そして最もやっかいなのが、「未成年者」という言葉が「子供」に塗り替えられてしまい、司祭の6%が小児性愛者だと論じた者がでてきて、その言葉が独り歩きしてしまったことだ。
数字はそのままにして「未成年者に魅力を感じる」が「小児性愛者」へと変換されてしまったわけです。
ゆうすけ
4.交通事故死者数
ある新聞記者が、2000年の最初の6か月間にデラウェア州で56人が交通事故で死んだと報じた。
その記事についていた表では、2000年の前半の56人という交通事故死者数が1999年の104人という交通事故死者数と対比されていた。
前半で56人ということは、このまま同じ確率で交通事故で亡くなる方がでてくれば、その年の交通事故死者数は112人(56×2)と推定できる。
これは、1999年の104人と比べて多い数字なので、2000年は事故が多いのだと印象を受けますよね。
と考えると、2000年は交通事故で亡くなる方が多い年のように思えます。しかし、本当にそうでしょうか?
もっと他のデータを見てみると、1997年には148人、1996年には116人が亡くなっていた。つまりまとめると以下の通り。
- 1996年:148人
- 1997年:116人
- 1999年:104人
- 2000年(推定):112人
つまり、2000年の「今年の交通事故死者数は112人くらいになるだろう」というのは、それほど大きな数ではないことがわかります。
ゆうすけ
5.政治的抗議運動の人の数
1995年夏、ネイション・オヴ・イスラムの指導者、ルイス・ファラカンはアフリカ系来国人の男性に、10月17日に首都ワシントンにある、モールと呼ばれる公園でおこなわれる「100万人大行進」に参加するよう呼びかけた。
p171
ゲイとレズビアンの権利をめぐる抗議デモで多くの群衆が集まったそう。
デモというのは抗議者の数が多ければ多いほど、その威力が大きくなるのは言うまでもないだろう。
よって、デモ主催者は集まった人の数について大きな推定値を示した。
一方、米国警察官はモールの治安維持を担当し、そこに集まった群衆の数を主催者側発表より著しく小さい数字を出した。
例えば、1993年4月25日にワシントンでおこなわれたゲイの権利行進の主催者は、100万人以上の人がデモに参加したと見積もったが、警察は30万人しか参加しなかったと推定した。
ゆうすけ
数字に騙されないための2つのポイント
統計は完璧ではない
- 人が観測して
- 人が作って
- 人が発表する
統計は人によって左右されるため、どうしても完璧にはなり得ないということは、頭に入れておかなければなりません。
「テレビで報道してるから間違いない」
「このご時世に間違いはないだろう」
僕らは数字を見せられると、その具体性からストレートに信じてしまいがちですが、完璧にあってるということはないんです。
統計は完璧ではなく間違いを含むということがわかるよう、例えば「自殺者数」について考えてみましょう。
- 自殺の定義
- 検死官の誤判断
- 暗数の存在
まずは、自殺の定義を決めないと、判断できないですよね。うつ病でなくなった方は自殺?遺書がない場合は?
自殺の定義を広くとれば数は多くなるし、逆に定義を狭くとれば数は少なくなります。
そして、これは自殺なのか?他殺なのか?人の目の判断(検視官)が誤ることもありますよね。
あとは、暗数といって、なんらかの原因により統計に現れなかった数字が存在していることも当然あるでしょう。
統計は見せ方で変わる
先ほどの自殺者数の話の続きで言うと、例えば、
「自殺者数を多く見せて、人々に危機感を植え付けたい」という意図を持った人の作る統計は、自殺の定義を広くとることでしょう。
つまり、発信者の意図によって見せ方が変わり、受け取る印象がガラリと変わるということです。
そのような統計に騙されないためには、
- その統計は誰が?
- どういう意図で?
- どのように作ったのか?
これらを知る必要があります。
特に、「この統計を見せる発信者の意図は何か?」を考えることが重要です。
最後に
本記事は、ジョエル・ベスト著『統計はこうしてウソをつく』をもとに書きました。
統計がいかに脆く、見せ方によって受け取る印象がガラリと変化することがわかったと思います。
本書は、2019年、最も売れたビジネス書のハンス・ロスリング著『FACTFULNESS』に似ていると感じました。
FACTFULNESSはオーディブル対象本なので、無料体験で聴くことができます。
1分でできる解約しても、最初の1冊は聴き続けることができます。
『FACTFULNESS』は、「僕らの世界貧困に対するイメージ」と「現実の世界貧困の実情」との間にいかにギャップがあるのかを説いた本です。
そしてさらに、僕らがなぜ世界に対して歪んだ見方をしてしまうのか?正しく世界を見るためには?ということが事実と考え方ベースで書かれています。
それに対して『統計はこうしてウソをつく』の著者が言いたいことは、数字・統計そのものを疑うことが大事ということです(僕はそう読み取りました。)
もちろん、ニュースなんかで、「見る数字見る数字すべてを疑え」というわけではないですが、「統計だから間違いないだろう」とストレートに受け入れてばかりいるのは、危険なんじゃないかなと思います。